プロローグ 2 | もしも君が迷ったなら

もしも君が迷ったなら

思いついた言葉を詩に。思いついたストーリーを小説に。

「あーあ。つまんねぇ」
 一人の悪魔が日本の上空で呟いた。
「この辺で面白いヤツいねぇのかなぁ」
 悪魔は地上を見渡しながら言った。
「お。あいつ暗い顔してんなぁ」
 楽しそうに笑いながら後を付ける。悪魔は彼女、優子の情報を手に入れながら、どう遊ぶかを考え始めた。
「そうだなぁ。やっぱ一番身近な人間を殺すか」
 悲しむ顔を想像し、楽しみで仕方がなかった。
「お、あいつだな。幼馴染君は」
 優子に話しかける男を見つけ、ニヤリと笑った。
 学校からの帰り道。確かあの工場の真横を通るはずだ。
「来た来た」
 悪魔は楽しそうにちょっと指を動かし、二人が丁度真横に来た時に合わせて、建物に立てかけてあった木材を倒した。


「優子、危ない!」
 悪魔の思惑通り、幼馴染の男、高村健太は優子を突き飛ばし、木材の下敷きになった。突き飛ばされた優子は無事だった。
「け、健太くん!」
 優子は必死で木材を退けようとするが、重くて持ち上がらない。そのうちに工場で働いていた従業員が出てきて、木材を退かしてくれた。
「……健太くん……」
 優子は泣きそうになりながら、健太の手を握った。すると力なく握り返して来る。
「ゆ……こ、だ……じょぶ……?」
「あたしは怪我してないよ。大丈夫だよ」
「よ……かた……」
 そう言うと、握っていた手の力がなくなった。
「やだ、健太くん……しっかりして!!」
 優子は思わず祈った。別に神様を信じてる訳でもないのに。だけど何かにすがりたくなった。
『神様、お願いします。健太くんを……助けてください!』


 ヨクは事の一部始終を天界で見ていた。
「……の……やろ……」
 許せない。ココで見守ることしかできない自分に腹が立つ。とっさの判断で、木材が倒れる瞬間、倒れる位置を少しずらしたから、健太はきっと無事だろう。
 でも、許せなかった。あの悪魔が面白半分で人の命を弄んでいることも、ココに居て見守ることしかできない自分も。



 守りたい。守ってあげたい。
 そしてあの子に教えてあげたい。
 もっと明るく生きる方法を。



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